チベット仏教にはいくつかの大きな宗派があり、それぞれ独自の教えと修行法を発展させてきました。
代表的なのが ニンマ派、カギュ派、サキャ派、ゲルク派 の4つです。
この記事では、チベット仏教の宗派がどのように成立し、どんな特徴を持つのかを歴史的背景とともに解説します。
チベット仏教の全体像を理解するうえで欠かせない内容です。
チベット仏教の宗派形成の背景
仏教がインドから伝来した7〜8世紀以降、チベットでは翻訳事業や僧院文化が進みました。
やがて学派ごとに特色ある修行体系が生まれ、宗派として確立していきます。
宗派の違いは対立を生むものではなく、むしろ多様性を生み出し、人々の信仰を豊かにしました。

ニンマ派 ― 最も古いチベット仏教の宗派
正規にには「ンガギュル・ニンマパ(旧訳古派)」といい、9世紀まで続いた古代吐蕃時代に翻訳された古タントラ(古訳密教経典)に依拠する古い宗派であることを意味します。開祖はインドの密教行者であるグル・リンポチェ。ボン教の影響が大きいです。
- 成立
8世紀、蓮華生大師(パドマサンバヴァ)が広めた教えを継承。チベット最古の宗派で「古派」と呼ばれます。 - 特徴
- 密教の修法や儀式を重視
- 「ゾクチェン(大完成)」と呼ばれる最高の瞑想法を伝承
- 色鮮やかな法具や儀式音楽が特徴
- 影響
自然発生的で伝統色が強く、チベット仏教の文化的基盤を築きました。

カギュ派 ― 瞑想と修行を重視する宗派
化身ラマ制度が始めた宗派です。多くの分派に分かれており、密教色が色濃いです。
- 成立
11世紀、インドからの高僧マルパとその弟子ミラレパによって広められました。 - 特徴
- 瞑想と厳しい修行を中心とする実践派
- 「マハームドラー(大印)」という深遠な瞑想法を伝える
- 系譜を重んじ、師から弟子へと教えを継承
- 著名な人物
偉大な修行者ミラレパは、詩と歌で仏教の教えを広めたことで知られています。 - 影響
個人修行を重視し、今日でも修行僧や瞑想実践者に人気の高い宗派です。

サキャ派 ― 学問と実践を重んじた宗派
13世紀にモンゴルへの布教に成功し、チベット全土を支配していました。化身ラマ制度ではなく、世襲で継承しています。
- 成立
11世紀後半、サキャ寺を拠点に発展。「サキャ」は「灰色の大地」という意味を持ちます。 - 特徴
- 学問的な研究と実践のバランスを重視
- 密教儀礼と哲学的な学問を融合
- 教義体系が整備され、論理的な研究が進んだ宗派
- 歴史的役割
13世紀、モンゴル帝国(フビライ・ハン)と結びつき、チベット全土を統治したことで政治的にも大きな影響を持ちました。

ゲルク派 ― 改革派として誕生し、ダライ・ラマを生んだ宗派
この4大宗派において、最も大きな宗派です。ダライ・ラマをトップとして、戒律を重視し、僧侶の妻帯を禁じています。
- 成立
14世紀末、ツォンカパ大師によって設立。
既存宗派の戒律緩みを正すために「新しい規律(ゲルク)」を打ち立てました。 - 特徴
- 戒律を重視した厳格な僧院制度
- 論理学と学問研究を徹底
- 大規模な僧院を形成し、教育機関として発展
- ダライ・ラマ制度
15世紀以降、ゲルク派から「ダライ・ラマ」が選ばれるようになり、精神的・政治的指導者としてチベットを導くようになりました。 - 影響
現在、世界的に最も知られているチベット仏教の宗派となっています。

宗派の違いをまとめると
- ニンマ派:最古の宗派、密教儀式とゾクチェンを重視
- カギュ派:瞑想中心、修行者ミラレパで有名
- サキャ派:学問と密教の融合、モンゴル帝国との結びつき
- ゲルク派:戒律と学問を重視、ダライ・ラマを輩出
それぞれの宗派が特色を持ちつつ、共通して「祈りを形にする文化」を大切にしているのがチベット仏教の特徴です。
よくある質問(FAQ)
Q. チベット仏教にはいくつの宗派がありますか?
大きくはニンマ派、カギュ派、サキャ派、ゲルク派の4つが代表的です。
Q. どの宗派が一番有名ですか?
現在、世界的に最も知られているのはゲルク派で、ダライ・ラマ法王の宗派です。
Q. 宗派の違いは対立を生んでいますか?
いいえ。宗派は多様性として尊重され、互いに影響を与え合っています。
TIBET INORIと宗派の智慧
TIBET INORIは、チベット仏教の宗派が持つ多様な智慧を尊重しています。
- ニンマ派の密教儀礼と瞑想の深さ
- カギュ派の修行と個人の探求心
- サキャ派の学問と実践の融合
- ゲルク派の規律と慈悲の精神
それぞれの宗派に流れる共通の想いは「祈りを形にし、心を整えること」。
そのエッセンスを現代の暮らしに届けるのが、TIBET INORIの役割です。
