山道の峠に立つ白い塔。村の入口に並ぶ小さな祠のような建造物。僧院の周りを取り囲むように点在するストゥーパ。
チベット仏教圏を象徴する景色のひとつが、チョルテン(チョルテン/チョルテン)と呼ばれる仏塔です。
チョルテンは、ただの建物ではありません。
それは 仏の悟り・教え・功徳を“形”としてこの世に置くためのもの。人々はチョルテンの周りを巡り、祈り、供物を捧げ、心を整えます。
この記事では、チョルテンの意味・由来・構造・巡礼作法・代表的な形(八大仏塔)・チベット仏教における位置づけまで、できるだけ正確に、初心者にもわかる言葉でまとめます。
チョルテンとは?|ストゥーパ(仏塔)のチベット版
チョルテンは、インドで生まれた仏塔 ストゥーパ(stupa)が、チベット仏教圏で発展した呼び名・様式です。ストゥーパは本来、仏陀や高僧に関わる聖なる遺物(レリック)などを納め、礼拝・巡礼の対象となる記念碑的モニュメントとして発展しました。
チベット・ヒマラヤ地域ではこの仏塔が独自に受け継がれ、生活のなかに溶け込む“祈りのランドマーク”として定着します。僧院の境内はもちろん、村の中心、峠道、川沿い、家々の近くにも見られるのが特徴です。
なぜチョルテンを建てるの?|「祈りを形にする」ための三つの意味
チョルテンが大切にされる理由は、大きく分けて次の三つに整理できます。
1) 遺物・聖なるものを納める(功徳の場)
ストゥーパの重要な役割のひとつが、仏陀や聖者に関わる遺物などを納めることです。こうした対象は信仰の中心となり、そこに礼拝する行為が功徳(メリット)につながると考えられてきました。
2) 仏の悟り(目覚め)を象徴する(教えの“視覚化”)
チョルテンは、仏教の世界観や悟りへの道を“形”で表したものでもあります。見るだけで心が整い、巡ることで修行になる――そんな思想が背景にあります。
3) その土地を守り、祝福する(共同体の拠り所)
峠や村の入口にチョルテンが置かれるのは、「旅の安全」や「土地の加護」を願う意味もあります。祈りが共同体の生活リズムを作り、日々の節目を支えてきました。
チョルテンの基本構造|各パーツに意味がある
チョルテンは地域や流派、時代で細部が異なりますが、一般的に「下から上へ」積み上がる構造が特徴です。ストゥーパは歴史的には円形基壇+半球形のドーム+上部構造(傘など)という構成を取り、そこから各地で多様に展開しました。
チベット仏教圏では、チョルテンの各部が五大(地・水・火・風・空)などの象徴として説明されることも多く、教えを立体化した存在として理解されます。
よく語られる象徴(代表的な理解)
- 基壇(ベース):地(安定・土台)
- 丸い胴(ドーム):水(包む・潤す)
- 四角い部分(ハルミカー等):火(変容・智慧)
- 尖塔(スパイア):風(動き・働き)
- 頂部の宝珠(ティグレ等):空(広がり・究極)
※象徴の説明は伝統や解釈により細部が変わることがあります。大切なのは「上へ上へと意識が開かれていく」ような、全体の方向性です。
チョルテンの周りを回る理由|コルラ(巡礼)と功徳
チョルテンに出会ったとき、チベット仏教圏の人々が自然に行うのが周回(コルラ/コーラ)です。これはストゥーパや僧院、聖山の周りを歩いて巡る実践で、礼拝・瞑想・功徳の行として広く行われます。
基本は「右回り(時計回り)」
チベット仏教では、一般に時計回り(右回り)で巡ります(聖なる対象を右側に置く)。
(※ボン教などでは逆回りの伝統が語られることもあります。)
巡り方のイメージ
「何か特別なことをする」のではなく、歩くこと自体が祈りになる。それがコルラの魅力です。
チョルテンの代表的な種類|八大仏塔(八種のストゥーパ)
チベット仏教圏では、仏陀の生涯の重要な出来事を象徴する八大仏塔(Eight Great Stupas)がよく語られます。呼び名や細部は伝統により差がありますが、概略として次のような型が知られています。
- 蓮華生(誕生)を象徴する塔(ロータス/誕生の塔)
- 悟り(成道)を象徴する塔(エンライトメント/悟りの塔)
- 初転法輪(最初の説法)を象徴する塔(法輪の塔/多門の塔)
- 神変(奇跡)を象徴する塔(奇跡の塔)
- 天界からの降下を象徴する塔(降下の塔)
- 和合・和解を象徴する塔(和合の塔)
- 長寿(寿命延長)を象徴する塔(長寿の塔)
- 涅槃(入滅)を象徴する塔(涅槃の塔)
旅行記や寺院紹介で「このチョルテンは八大仏塔の〇〇型」と説明されることがあるのは、この伝統が背景にあります。
チベット仏教の暮らしとチョルテン|なぜ“道端”にあるのか
チョルテンは「寺院の中にある宗教建築」ではなく、生活空間の中に置かれる信仰の装置として機能してきました。
- 旅人が峠で立ち止まり、手を合わせる
- 村人が朝の用事のついでにコルラする
- 子どもが遊びながら自然に右回りを覚える
- 供物(花・灯明・香)を供えて心を整える
つまりチョルテンは、「祈りを思い出させるランドマーク」。
心が散りやすい日常のなかで、何度でも立ち返る“しるし”として働いています。
自宅でできる「チョルテン的」な実践|祈りを生活に溶かすコツ
「チョルテンのある土地」は特別に見えるかもしれません。
でも本質は、祈りを“形”にして、日々の動作と結びつけることです。
たとえば、こんな工夫が近い感覚になります。
- 朝の数分、呼吸を整えて短い祈りを置く
- 机や棚に“小さな祈りのコーナー”を作る(灯り/香/好きな言葉)
- 歩くときに一言だけマントラを心で唱える
- 「誰かの幸せ」を具体的に一人思い浮かべる
大切なのは派手な儀式よりも、**繰り返し戻れる場所(習慣)**を持つこと。
チョルテンは、その知恵を建築として体現した存在だと言えます。
よくある質問(FAQ)
Q1. チョルテンとストゥーパは違うの?
大きく言えば同じ「仏塔」です。ストゥーパはインド起源の呼称で、チョルテンはチベット仏教圏での呼び方・様式を指すことが多いです。いずれも礼拝・巡礼の対象で、遺物などを納める記念碑として発展してきました。
Q2. チョルテンはなぜ右回りに巡るの?
仏教圏では、聖なる対象を右側に置いて巡る(時計回り)作法が広く見られます。巡礼や礼拝の形式として整理され、百科事典でも「時計回りの周回(プラダクシナ)」が儀礼として説明されています。
Q3. ただ回るだけで意味があるの?
チベット・ヒマラヤ地域では、周回(コルラ)は礼拝であり、歩く瞑想でもあるとされます。マントラや数珠、祈りの輪と組み合わせて実践されることも多く、「行為そのものが功徳を積む」と理解されてきました。
TIBET INORIとのつながり|祈りを「形」にする智慧
チョルテンは、チベット仏教の核心である
「祈りを形にし、生活の中に置く」という智慧を象徴しています。
マニ車、ガウ、タルチョ――それらもまた、祈りを“目に見える形”にし、日々の暮らしに溶け込ませるための道具です。
TIBET INORIは、そうした祈りの文化を、現代の暮らしの中で無理なく感じられる形で届けたいと考えています。

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