ネパール・カトマンズ盆地にある ボダナート(Boudhanath/Bouddhanath) は、白い巨大なドームと金色の塔が印象的な、ネパールを代表する仏教遺跡です。チベット仏教(チベット系仏教)の巡礼地としても世界的に知られ、仏塔の周囲を人々が時計回りに巡り、マントラを唱え、祈りの輪(マニ車)を回す光景は、まさに「祈りが生活に溶け込む土地」を象徴しています。
この記事では、ボダナートの 歴史・宗教的な意味・見どころ(仏塔の構造や“ブッダの眼”)・巡礼作法(コルラ)・周辺のチベット文化まで、できるだけ正確に、初心者にもわかる形で解説します。
ボダナートはどこにある?|カトマンズ盆地の重要な聖地
ボダナートは ネパールの首都カトマンズ の北東側に位置し、カトマンズ盆地を代表する文化遺産群の一つとして、ユネスコ世界遺産「カトマンズ盆地(Kathmandu Valley)」の構成資産に含まれています。
カトマンズ盆地には複数の世界遺産モニュメントが点在しますが、ボダナートはその中でも 仏教側を代表する“巨大ストゥーパ(仏塔)” として、スワヤンブナート等と並ぶ存在感を持っています。
ボダナートとは?|ストゥーパ(仏塔)の“巨大な聖地”
ボダナートは、仏教の ストゥーパ(チョルテン) の代表例です。ストゥーパは本来、仏や聖者に関わる聖なる要素を象徴的に納め、礼拝・巡礼の対象となるモニュメントとして発展してきました。
ボダナートの特徴は、単に「大きい」だけではなく、
- 周囲を巡る“歩く祈り”(コルラ/コーラ)が日常的に行われる
- チベット仏教の僧院・コミュニティが周辺に集まり、文化圏そのものを形成している
- “ブッダの眼”など、象徴的な意匠が信仰と結びついている
という点にあります。

歴史のポイント|古代から交易路の信仰拠点、そしてディアスポラの中心へ
ボダナートの創建年代は、史料や伝承の整理が一様ではないものの、一般に リッチャヴィ朝(Licchavi)時代(概ね5〜6世紀頃) に関連づけて語られることが多い遺跡です。
またボダナートは、古くから チベットとカトマンズ盆地を結ぶ交易路 の動線上にあり、往来する人々が祈りを捧げる場として重要でした。
さらに近現代では、1959年のチベット動乱以後のチベット人ディアスポラ(亡命・移住) によって、ボダナート周辺にチベット系の僧院や商い、文化が集積していきます。現在のボダナートが「ネパールにおけるチベット仏教文化の中心地」として語られる背景には、この歴史があります。
ボダナートの見どころ①|巨大な白いドーム(“宇宙”を象徴する形)
ボダナートを象徴するのが、圧倒的なスケールの 白いドーム(半球状の本体) です。
ストゥーパはしばしば「宇宙」や「悟りの世界」を象徴する立体表現として理解され、見る人の心を一点に集め、祈りへと向かわせる“形の力”を持ちます。
ボダナートの周囲では、早朝から夜まで、人々が
- ゆっくり歩きながら祈る
- 数珠(マーラー)を繰る
- マニ車を回す
- 静かに供物を捧げる
といった形で、信仰を日常の動作として積み重ねています。
見どころ②|“ブッダの眼”が見つめる四方
ボダナートの上部に描かれている有名な意匠が、四方を見つめる “ブッダの眼(Eyes of Buddha)” です。
これはネパールの仏塔に広く見られる象徴で、ブッダの智慧があらゆる方向を見通すことを示す、と説明されます。ボダナートとスワヤンブナートは、その代表例としてしばしば挙げられます。
写真で見ると“目力が強い”印象ですが、怖いものではなく、
「自分の内面も含めて、曇りなく見通す智慧」を思い出させるサインだと捉えると理解しやすいです。
見どころ③|祈りの輪(マニ車)と、祈りの回廊
ボダナートを歩くと、周回路のあちこちに マニ車(祈りの輪) が並び、参拝者が自然な手つきで回していく姿が見られます。
チベット仏教では、経文やマントラを納めたマニ車を回すことが祈りの実践として重視され、
「長い経典を読む時間がない日常の中でも、祈りを続ける知恵」として生活に根づいてきました。
ボダナートは、まさにその“祈りの回廊”が巨大スケールで成立している場所です。
ボダナートで行われる巡礼「コルラ(コーラ)」とは?
ボダナートを語る上で欠かせないのが コルラ(kora/周回巡礼)。
聖地や仏塔の周りを歩いて巡る行で、歩く瞑想・礼拝として実践されます。
基本は「時計回り(右回り)」
チベット仏教では一般に、聖なる対象を右側に置く 時計回り で巡るとされます(ボン教は反対方向が語られることもあります)。
コルラのときに意識したいこと(初心者向け)
- 静かに、流れを乱さないスピードで歩く
- 写真撮影は周囲への配慮を優先する
- 祈っている人の前に割り込まない
- 可能なら「短いマントラ」や「呼吸」を意識して歩く
“観光”と“巡礼”が同じ空間に共存しているのがボダナートの特徴です。だからこそ、少しだけ敬意を持つだけで、場の空気がまるで違って感じられます。
ボダナート周辺が「チベット仏教の街」になった理由
ボダナートの周辺には、チベット系の僧院(ゴンパ)や学校、工房、食文化が集まっています。
これは近現代のディアスポラの歴史と深く結びつき、「信仰の場」が「暮らしの場」へ広がった結果でもあります。
そのためボダナートは、単なる遺跡ではなく、
- 祈りが回り続ける“現在進行形の聖地”
- チベット文化が息づく“生活圏”
- 世界中の巡礼者が交わる“交差点”
として機能しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. ボダナートはチベットにあるの?
いいえ、ネパール(カトマンズ盆地) にあります。ただし歴史的に交易路と結びつき、近現代のディアスポラの影響もあって、チベット仏教文化の重要拠点として知られています。
Q2. なぜあんなに大勢がぐるぐる回っているの?
周回する巡礼(コルラ)は、聖地に対する礼拝であり、歩く瞑想でもあるとされます。時計回りに歩き、マントラを唱えたり数珠を繰ったりして、祈りを積み重ねます。
TIBET INORIとのつながり|「祈りを形にする智慧」を体感できる場所
ボダナートの本質は、巨大な建造物そのものというよりも、
祈りが“形”になって街のリズムを作っていることにあります。
タルチョ、マニ車、数珠、供物、周回する足音。
それらが日常の動作として繰り返されることで、祈りは特別なイベントではなく「生活」になっていきます。
TIBET INORIが大切にしているのも、まさにこの感覚です。
祈りの道具は、信仰を押しつけるためではなく、
心を整え、願いを思い出す“きっかけ”として、暮らしの中に置くことができます。

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マニ車・ガウ・タルチョなど、祈りと願いを形にしたアイテムを揃えています。
