ダライ・ラマ14世(テンジン・ギャツォ) は、チベット仏教の精神的指導者であり、非暴力と慈悲のメッセージを世界に発信してきた人物です。1989年にはノーベル平和賞を受賞し、その受賞理由は「寛容と相互尊重に基づく平和的解決の提唱」でした。
基本プロフィール
- 本名:ラモ・トゥンドゥプ(Lhamo Thondup)
- 生年:1935年7月6日/生誕地:タクツェル(アムド地方、現・青海省)
- 即位:1940年2月22日、ラサで即位式(幼年即位)
- 拠点:1959年に亡命後、インド・ダラムサラに在住
これらはダライ・ラマ法王庁(公式サイト)の略伝や写真アーカイブに基づきます。
年表でみる生涯
- 1935年 アムド・タクツェルの農家に生まれる。幼名ラモ・トゥンドゥプ。
- 1940年 ラサで即位式。以後、学問と修行を積む。
- 1950年 中国軍の進攻に伴い、15歳で政治権限を引き受ける。
- 1959年 チベット蜂起ののちインドに亡命。以後ダラムサラに拠点を置く。
- 1959年4月29日 亡命チベット行政府(CTA)を設立(後にダラムサラへ移転)。
- 1989年 ノーベル平和賞受賞。
- 2011年 政治的権限を民選指導部へ委譲(ダライ・ラマは宗教的指導に専念)。
教えと思想の核心
1) 慈悲と非暴力
生涯にわたり、暴力によらない対話と相互理解を説き続けています。受賞講演でも非暴力の理念が繰り返し語られました。
2) 中道のアプローチ(Middle Way Approach)
チベット問題の解決策として、「中国の主権の下での真の自治」を求める方針。独立ではなく自治を目指し、文化・宗教・言語の保持を可能にする道を提案しています。
3) 世俗倫理(Secular Ethics) と科学対話
宗教を越えて共有できる倫理(思いやり・誠実・責任)を提唱し、『Beyond Religion(2011)』でも体系化。さらにMind & Life対話を通じ、神経科学などとの学際的な対話を進めています。
主要著作(入門ガイド)
- 『The Art of Happiness(幸せの習慣)』(1998):幸福は心の訓練で育めると説くベストセラー。
- 『Freedom in Exile(自由への道)』(1991):自伝。亡命前後の体験と思想を語る。
- 『The Universe in a Single Atom(宇宙と一つの原子)』(2005):仏教と科学の接点を探る。
近年のトピック(健康・後継・国際情勢)
健康と活動
2024年6月28日、ニューヨークのHospital for Special Surgeryで膝の置換手術を受け、その後シラキュース近郊で6週間の回復を終えて活動を再開。
後継と継承プロセス
2025年7月2日、「ダライ・ラマ制度は継続する」との声明を発表。後継者の認定権限はガンデン・ポタン(法王庁)=Gaden Phodrang Trustに専属すると再確認しました(2011年声明の再確認)。
一方、中国側は後継の最終決定権は中国政府にあると主張しており、当面は「二つのダライ・ラマ」問題が懸念されています。
ダライ・ラマ制度については、こちらの記事で詳しく解説しています。

よくある質問(FAQ)
Q1. ダライ・ラマ14世はどこに住んでいますか?
インド北部のダラムサラです。1959年の亡命以降、ここが活動拠点になっています。
Q2. 「ダライ・ラマ」は称号? 個人名?
「ダライ・ラマ」は称号で、観音菩薩の化身とされる系譜の転生者(トゥルク)を指します。現法王は第14代です。
Q3. チベットの政治は今、誰が担っているの?
2011年以降、ダライ・ラマは政治権限を民選指導部へ委譲し、チベット亡命政権(CTA)が行政を担っています。
Q4. 中道のアプローチって簡単に言うと?
チベットの独立ではなく、中国の憲法枠内での真の自治(文化・宗教・言語の保護)を求める政策です。
まとめ:TIBET INORIの視点
ダライ・ラマ14世は、慈悲・非暴力・対話を軸に、チベット文化の存続と世界の共生を訴え続けてきました。中道のアプローチは、対立を深めるのではなく「ともに生きる解」を探る試みであり、現代社会の課題(分断・憎悪・環境)に応用可能な普遍性を持っています。
TIBET INORIは、その精神を日常の祈りと行いに翻訳して届けていきます。

